かっこいいぞ、四月と十月。
と書いてもほとんどの人はわからないですか。実は、ここ1年ほど、心待ちにしている雑誌があって、そのタイトルが「画家のノート 四月と十月」なのです。右の画像が表紙。かっこいい・・・。(真中に見える●が、版画の一部。おもいきり拡大されている)
この本は、数人の画家・デザイナーによる同人誌(?店頭でも買えます)で、作品の図版と、作家が感じた日常をつづった短文でをまとめたもの。文字通り4月と10月に発行されます。全ページモノクロで、「読む美術雑誌」の名がふさわしいかな。
今度の号でわかりやすく面白かったのは、牧野伊三夫氏の取材による「月光荘画材店のおじさん」。銀座の画材屋月光荘は、自社生産の良質な絵の具やスケッチブック、絵の具箱を置いている小さな店。与謝野鉄幹、晶子夫妻を始めとする文人や、昭和の画家たちに愛された店でもある。その歴史と、「月光荘おじさん」と呼ばれた橋本兵蔵氏についての、胸のきゅんとするような物語だ。
この雑誌のいいところは、いますぐ読まなくてもいいことではないかと思っている。普段ノンフィクションや、研究書に近いものばかり読んでいると、どうしても「この本は値段相応に役に立つだろうか、いつまでに読むべきだろうか」などと考えてしまうが、画家たちの日記は、すぐにストンと腑に落ちては来ないが、じんわりとしみてくるものがある。
作品の説明があるわけではない。絵や写真の色はわからないので、想像する。そこがまたいい。「こんな風に世界が見える人がいるんだ」と思う。本棚にさしておくと、何ヶ月も後になってから、また手にとって読み返してみたくなる、そんな雑誌だ。<と>
画家のノート 四月と十月(500円、地方・小出版流通センター扱い)
四月と十月編集室